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旧ザク 機体名 旧ザク(ザクⅠ) 全長 17.5m 主武装 105mmマシンガン ザクⅡが持ってる120mmザク・マシンガンの原型でもある。持って行っても役に立つかは微妙。 240mmバズーカ 同じくザクⅡが持ってる240mmザク・バズーカの原型である。マシンガンよりは使えると思う。 ヒート・ホーク 刃に熱の篭った斧。旧ザクのジェネレータ総出力が低いため切れ味はたいして良くはない。 特殊装備 盾(?) 盾ぐらい付いてた気がする。 移動可能な地形 空中×、陸地○、水中△、地中× 備考 宇宙世紀史上もっとも最初に量産されたモビルスーツ。顔が骨っぽい。機動戦士ガンダムの3話に登場し、補給艦の護衛の任に当たり、ガンダムに戦いを挑むがあっさり敗れる。この時のパイロットはガデムというベテランパイロットが乗っていたが、MSの操縦に慣れていないアムロに負けるとこから、モビルスーツ、ならびにパイロットの世代交代を思わせられる。なおこの機体は劇場版にてア・バオア・クーの戦いに投入されたところを見ると、長くのあいだ使われたことが解る。また08小隊においても、サイド2に毒ガスを発射したり、ゲリラの村で生身のシローに脚部を破壊されたりなど、本編より活躍してる気がする
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花言葉は「勇敢」 ◆6.x14AMM0o 「アインストだかなんだかしらねえが、こんな事許せるかよっ!」 一人だけの艦橋で少年―兜甲児―が叫ぶ。 Drヘルとの一年以上にも及ぶ戦いを終え、彼はアメリカへの留学直前にこの殺し合いの場に連れてこられた。 あの部屋での記憶を蘇らせば、ふつふつとこの理不尽なゲームに怒りがこみ上げる。 Drヘルの一味でさえもあそこまで残酷な仕打ちはしなかったはずだ。 今すぐにでも、このゲームを打ち壊しあの化け物を倒しにいきたかった。 だが支給された機体、いや戦艦であるナデシコ級一番艦「ナデシコ」ではその巨躯からして、身動きがとりにくい。 そしてこのナデシコを動かす上で兜甲児に決定的に足りなかったものがある。 それはIFSと呼ばれるナノマシンを体内に注入し自分の意思をダイレクトに機体に伝える為のシステムである。 当然、ナデシコの存在した世界とは異なる世界の住人である甲児がIFSを持っているはずが無かった。 もどかしさを感じながらもどうする事も出来ず、コンソールに右手を置く。 すると今まで感じた事の無い感覚が全身に伝わる。 右手には見たことのない模様が浮かび、ナデシコの様々な部分から動き始めた音が聞こえる。 「こいつが、IFSって奴なのか・・・でもいつの間に。」 連れ去られた間に体をいじられたのかと思うといい気持ちはしない。 だが、おかげでどうやら操縦する事はできそうだ。 しかし、まだ問題は残る。 戦艦はマジンガーの様にパイロット一人がいれば良いというものではない。 オペレーター、通信士、操縦士など、様々な人間が居ることではじめて成り立つのである。 だが、「オモイカネ」と呼ばれるコンピューターが使用できればそれもどうにかなるはずである。 「オモイカネ、俺に力を貸してくれ!」 IFSというなれない操作方法にぎこちないながらもオモイカネに語りかける。 だがオモイカネからの返答は一切無い。 本来、正規クルーではない甲児に不審を抱いているのかオモイカネは沈黙を続けるだけである。 「お願いだ!俺はこのゲームに乗っているわけじゃない!どうにかして止めたいんだ! だから、どうしてもお前の力が必要なんだ!オモイカネ!」 構わず、甲児はオモイカネに伝え続ける。 殺し合いを止めたいと言う熱い勇敢な意思を。 数秒の沈黙の後、ナデシコが浮上する。 「答えてくれたのか、オモイカネ。・・・へへっ、これからよろしくな相棒!」 ―花言葉は勇敢、その通りの思いを乗せナデシコは動き出す― 【兜甲児 搭乗機体:ナデシコ(機動戦艦ナデシコ) パイロット状況:良好、少し興奮気味 機体状況:良好 現在位置:D-3 第一行動方針:ゲームを止める為に仲間を集める。 最終行動方針:アインスト達を倒す】 BACK NEXT 彼女の答え 投下順 ……ぶっちゃけ、すっげー恥ずかしかった 邪龍空に在り 時系列順 人間様をなめるなよ BACK 登場キャラ NEXT 甲児 盤の上で駒は計略を巡らせて
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核ミサイル 機体名 核ミサイル 全長 約13m(大陸間弾道ミサイルがこの位の大きさの物が多かった気がするので) 主武装 自ら パイロットの意思で自由に動くらしい。その威力は1ブロック丸々吹き飛ばすとかなんとか。使うと相手も死ぬ。 特殊装備 コックピットシート(ロワ特別措置) 機体の外側に直接備え付けられているのでスピードを出しすぎると寒い。 シャア角(シャア特別措置) シャアザクの角はアンテナの役割を果たしているが……多分趣味の領域です。 シャア色(シャア特別措置) 赤いぞ! 格好良いぞ! 移動可能な地形 空:○ 陸:× 水:× 地:× 備考 みんなで守ろう非核三原則!持たず、作らず、持ち込ませず、だ!
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ベルゲルミル(ウルズ機) 機体名 ベルゲルミル(ウルズ機) 全長 21.30m 主武装 マシンナリーライフル よくわからん球を発射する。おそらくフォトンライフルが変化したもの。 シックス・スレイヴ 背中についた6個のマガタマを遠隔操作で相手にぶつける攻撃。なぜか6個を1つにまとめると火炎龍が出てくる。 特殊装備 HP回復(中) マシンセルのおかげで再生する。 EN回復(中) マシンセルのおかげで再生する。 分身 理論不明。おそらくマシンセルでF91と似たことをやってると思われる。 マシンセル ベルゲルミル最強の武器と言ってもいいかもしれない。マシンセルを散布して周囲の自然環境を激変させ、更に分解等も行う。数が少なく劣勢だったアンセスターがこれを使って恐竜帝国をまた地に押し戻したというからその効力はすさまじい。ロワじゃそんな効果強すぎだから、ビルを腐食させるとか木を枯らすとか、機体の表面を溶かすとかが精一杯でいいと思う。 移動可能な地形 空中○、陸地○、水中×、地中× 備考 ちなみに他のベルゲルミルと違ってウルズ機は白い。※本スレ 705にて機体画像が上げられていますが、とりあえずウチからはリンク貼りません。
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◆ 「……嫌だ…嫌だ」 立ち並ぶ廃墟をなぎ倒し、抉れた大地が一筋の巨大な爪痕になっていた。 その爪の先で地に伏すヒメ・ブレン。その中でアイビスはうわ言を繰り返し呟いている。 うつむき、小さく丸まり、膝を抱え、体は芯から奮え、瞳孔は開き、焦点の合わぬ瞳は揺れ、歯の根も噛み合わず、心も折れた。 怯えが、慄きが、恐怖が全身を支配している。 「アイビス、無事か?」 ――通信? 僅かに顔を上げ、コックピットの内壁にぼんやりと開かれた通信ウインドウに目を向ける。 端整な顔立ちの青年がそこにはいた。 「ク……ルツ?」 「動けるな? やり返すぞ」 「無理だよ!」 息巻くクルツの声に咄嗟に反対の言葉が出る。本心だった。 自身の無力を思い知らされ心砕けた少女を目の前にして、驚きの表情をクルツが浮かべる。 「何……言ってんだ?」 「……無理だよ。ジョシュアの敵討ちなんて……私には無理だったんだ。 あんな奴に……勝てるわけがない。ねぇ、逃げよう。逃げようよ。ここから逃げちゃおう」 「お前、本気で言っているのか?」 「本気……だよ。だって仕方ないよ。勝てないんだ! 怖いんだ!! どうしようもないんだからっ!!!」 ギンガナムを思い浮かべると何をするのよりも恐怖が先に立つ。涙がこぼれ、体が震えてどうしようもなかった。 「そうか……悪かった。悪かったよ。すっかり忘れてた。誰も彼もが戦闘に慣れてるわけじゃねぇんだよな。 どいつもこいつも機動兵器の扱いに長けてやがるから、ついあいつらといる気になっちまってた。……俺は残るぜ」 「無茶だよ。あんたもうほとんど弾ないんでしょ……殺されちゃうよ」 「あぁ、その通りだ。だからアイビス、俺は無理強いはしないぜ。でもよ。ここで逃げちまってもいいのか? そりゃ俺だって死ぬのは怖いさ。逃げ出したくなることもある。だけどよ……命を懸けても絶対に譲れないことって……あると思うんだ。 これさえやり遂げれば一生胸張って生きていけられる。そういうときってあるだろう? だから俺は諦めない。だから俺は戦う」 思わず見上げた瞳に真っ直ぐな目をしたクルツの顔が飛び込んできた。その顔が一度にっと笑い、すぐに真面目な表情を作る。 「柄にもねぇことを言っちまったな。まぁいい。後は俺一人でやってみる。助けに入ってくれたラキは見捨てられねぇ。例え勝てなくても一泡吹かせてやるさ。 お前は逃げろ。逃げてそのアムロとか言う奴に悪かったって代わりに謝っといてくれ。じゃあな。お互い生きてたらまた会おう!!」 「あっ! ま……」 返事を返すよりも早く通信は途切れた。ノイズを伝えるのみになった通信機を前に呆けたように立ち尽くす。膝を抱え、丸く蹲り呟く。 「ずるい……」 心の中では逃げ出したい思いと踏みとどまりたい思いが葛藤を続けていた。 こんな自分でもまだ何かやれることがあると思う一方で、行ったってどうせ何も出来やしないといった思いがある。 「ラキが……ラキがいるんだよね」 胸を張って生きていけるのかは分からない。でも、今逃げ出したら一生悔いて生きていくのだろうという予感はあった。 少なくともここで逃げてしまえば二度とジョシュアに顔向けは出来ないだろう。シャアにもだ。 (でも……でも……ブレン、私はどうしたらいい?) お前は行かないのか、と耳元がざわめく。引け目を、負い目を感じながら生きていくのなんて真っ平ごめんだ、と何かが囁く。 それでも足は前に出ない。どうしようもなく怖いのだ。もう一度ギンガナムとの交戦を考えただけで膝が笑い、腰が砕け、足が退ける。 行きたい思いと逃げたい思いが交錯し、アイビスはその場から動くことは出来なかった。 ◆ 蒼と白の巨人が踊っている。 突き出した斬撃が防ぎ、捌かれ、かわされる。 迫る拳を受け止め、受け流し、やり過ごす。 目まぐるしく入れ替わる攻防は一つの流れとなり、流れは次の流れへと滑らかに変化していく。 そんな攻防の中、奇妙な心地よさが全身を包んでいた。 ブレンバーをなんでもなくかわしたシャイニングガンダムの双眸が閃く。 さあ、来い。 お前の番だ。 重心の動きが見える。 体重が左足に移り、右足が僅かに浮く。 その動作をフェイントに、突然撃ち出される頭部のバルカン。 それをすり抜ける様にかわす。 音が消え。 色が消え。 五感が遠くなる。 やがて体も消えた。 何もない空間に残された意識だけが。 飛び。 交わり。 火花を散らす。 エッジを立てる。 刃先が一瞬輝く。 踏み込み、剣を振るう。 手ごたえはない。 そのことに心が湧き踊る。 馳せ違い、反転。 正対し、トリガーを引く。 極小距離からの射撃。 かわせ。 生きていろ。 もう一度、刃を交えよう。 飛び退く。 距離を取る。 体中の体重を足に乗せ。 もう一度、踏み込む。 相手も重心を足に。 そして、バネの様に前へ。 いいぞ、速い。 さあ、もう一度。 交錯する意識と意識。 剣と拳が擦れ違う。 掠ったか。 凄い。 いい動きだ。 楽しい。 しかし、何だ? 少し遅れた。 何故だ? 遅い。 重い。 どうした? どういうことだ? この不自由さは。 このズレは。 それに、声が。 ――ラキ。 男の声が。 ――ラキ。 聞きなれた声が間近に。 ――ラキ、そっちじゃない。 誰……ジョシュア? 不意に長く暗いトンネルを抜けたかのような色鮮やかな景色が周囲を埋め尽くした。 それに気を取られる間もなく、眼前に迫った豪腕の対応に追われて、咄嗟に身をよじる。 装甲の表面で火花が散ったかと思ったときにはもう蹴飛ばされて、1km先の地面を転がっていた。 何という素早さだ。 こんな相手と今まで五分に渡り合っていたというのが信じられなかった。 口の中を切ったのか血の味に気づき、五感が体に戻ってきたということを自覚する。 戻ってこられたのはあの空間に介在していた二つの意思のおかげ。 胸をギュッと掴む。消えたと思っていたジョシュアの心ともう一つ。 ただの機械ではなく生きている機械、感じたズレの正体――ネリー・ブレンの意思。 (ブレン、ありがとう) (……) 視線の先では、急に不調を起こしたこちらをいぶかしみ、待っている相手の姿があった。 その姿は語っている。『もっと戦おう』『もっと殺しあおう』と。 「ん?」 (……) 「大丈夫。もうそっちには引き込まれない」 ――そう。ジョシュアの心の頑張りを決して無駄にはしない。 ◆ 未だ暗い大地に重い足跡を残し、脚部に損傷を抱えたままのラーズアングリフは移動を続けていた。スナイパーであるクルツの頭に、ラキとギンガナムの接近戦に割り込むという選択肢はない。 移動の足を止めずに周囲に目まぐるしく視線を走らせ彼が探すのは、周囲でもっとも見晴らしがいいと思われるポイント。 コンクリートに覆われ、ビルに埋め立てられた市街地と言えど、元の地形を考えれば若干の高低差は存在する。その僅かに小高い丘一つ一つに厳しいチェックの目を向ける。 しかし、廃墟と化しているとはいえ、立ち並ぶビルは高く数も多い。高いところに高いものを建てるというのは、都市景観の一つの考え方なのだ。 絶好の狙撃ポイントといえる場所など見つかりはしない。それでも幾分マシな丘を見つけ、目を付けた。 周囲に気を配り、極めて慎重に、静かに、そして素早くビルの谷間を突き抜ける。坂を登りきったクルツの視界が開け、ラキとギンガナムが切り結ぶ戦場が映し出された。 「ここなら、いけるか……?」 戦場の全てを見渡せるという状態には程遠い。だがそれでもやるしかない。 地に伏せ、短銃に輪切りのレンコンを思わせる回転砲頭をつけたようななりのリニアミサイルランチャーを構える。 掌中の弾は僅かに二発。だがそれでいいとクルツは一人ごちた。 狙撃の前提条件は相手方に悟られないこと。その観点から見るとこの機体は少々派手過ぎる。一度発砲すればまず間違いなく見つかるだろう。 つまり二度目はなく、多くの弾はこの場合必要ない。問題はそれよりも狙撃にはおよそ向かないと思われる火器のほうにある。 近中距離用の小型ミサイル。噴射剤の航続距離には不安が残り、レーダー類が軒並み不調な以上、誘導装置もどこまで信頼できるかわからない。精度に問題が出てくる可能性が高いのだ。 「どうしたもんかねぇ、こりゃぁ……。でも、まぁ、大見得切っちまった以上やるしかねぇか」 頼れるのは最大望遠にした光学センサーと両の目のみ。 なんだかんだ言ってもやることに変わりはない。出来るだけ正確に目標を狙い撃つ。ただそれのみ。 機体を地面に伏せさせると、目を細め、小指の先ほどにしか見えない飛び交う二機の挙動を穴が開くほど見つめた。瞬きはしない。ただじっと動きを止めて来るべきときを待つ。 睨んだ視線の向うで七色に輝くチャクラ光と蒼白いブースターが、蛍のように大きく、小さく尾を引きながら明滅する。 突然、不調が起こったのかネリー・ブレンの動きが鈍る姿が見えた。そして見る間に押し切られ蹴り飛ばされる。 距離にして約1km。両者の間が開く。それを視認した瞬間には既にトリガーを引いていた。 煙の帯を引いたミサイルが銃身から飛び出していく。そして、カサカサに乾いた唇に舌を這わせ、もう一発。 弾装はこれでもぬけの空。だが、とりあえずの人事は尽くした。後は運を天に任せるのみ。 常識に従い速やかに射撃地点から離脱を始めたクルツの耳に、爆発の轟音が届いた。だが、噴射炎越しに直前で身を翻すのが見えた。案の定、爆煙の右上を裂いて敵機が現れる。 その様にクルツはにやりと笑った。 「予想通りだ! 往生しやがれ!!」 グッと親指を立てて突き出した右手を下へ返す。二発目はギンガナムに向かって猛進している。 気づいた敵機が姿勢制御用のスラスターを噴かし、慌てて左へ大きく流れた機体の勢いを殺す。 無駄だ、とクルツは一人毒気づく。場は空中、足場のないそこでは勢いは殺しきれない。ジャマーか、あるいはSF染みたバリア装置でも持っていない限り直撃は避けられない。 それがクルツの下した結論だったが、直ぐにそれは破られ驚くこととなった。 ギンガナムがブンッと音を立ててピンクの光刃を腰から引き抜く。そして、一切の躊躇もなしにミサイルに投げつけたのだ。 結果、直撃前にミサイルが爆発し、呆気に取られて動きを止めたクルツはギンガナムと視線がかち合うこととなる。 「やべっ!!」 息をつく間もなくギンガナムが反撃に転じた。左腕から無数の光軸が殺到する。一制射につき二筋の光軸。 「くそっ! 良い腕してやがる!!」 三制射かわしたところで体勢を崩し、四制射目がラーズアングリフの右膝間接を砕く。そして五制射目、コックピットへの直撃を覚悟した。 その直撃の刹那、異音と共に何かが視界に割り込む。眼前で七色に輝く障壁とピンクの光軸が火花を散らし、残響を残して消えていった。 両の手を大きく広げて身を挺して庇うように立ちふさがる機体を見上げ、クルツは抑えきれない笑いを噛み殺す。 「ようやくおいでなさって下さったわけだ」 見知った顔が一つ、モニターに映し出されている。赤毛に黒のメッシュの少女、アイビス=ダグラスだ。 「待たせてごめん。ここからは私も戦う」 「悪いな。こっちは弾切れ。ここらでギブアップだ。で、大丈夫か?」 おちゃらけた態度で両手を挙げてお手上げをアピール。そこから一転して真面目な顔つきに変わったクルツが言う。 それにアイビスはモニターに向かって右手を掲げて見せつつ、答えを返してきた。 「大丈夫じゃないよ。怖いし……ほら、手だってまだ震えてる。でも、ブレンがあの蒼いブレンを助けたがってるんだ。それに――」 「それに?」 「あたしもここで逃げたらジョシュアに顔向けが出来ない。 あんたが言うように胸を張って生きていくことが出来なくなる」 目を見、おっかなびっくりではあれど吹っ切れたようだな、と推察したクルツはクッと笑い、言葉を返す。 少なくとも、ただのやけっぱちでぶつかって行こうという心構えではないらしい。 「ない胸して、言うねぇ! 上等だ!!」 「一言余計だ!!」 「ハハ……怒るなよ。褒めてるんだぜ、これでも。 アイビス、モニターをこっちに回せ。俺がサポートをしてやる。思いっきり暴れてこい!」 「モニターを?」 「ああ! 敵機の行動予測と弾道計算、その他もろもろ全部任せろ」 「ナビゲーションの経験は?」 「ないっ!」 「えぇ~、無茶だって!!」 砕けた口調で返してきた言葉に、固さは取れたな、とにっと笑う。 軽口というのは、固くなって縮こまっている新米兵士に普段の自分を取り戻させてやるのに有効なのだ。それで随分と生存率が変わってくる。 「そいつは実際にやってみてから言う言葉だな。やってみもしねぇうちからする言葉じゃねぇ。少なくともないよりマシだろ? それに怪しければ無視してくれて構わねぇ」 「そりゃ……まぁ……」 「なら決まりだ! 俺とお前、二人で……いや、ラキも合わせて三人で奴に一泡吹かせてやろうぜっ!!」 「わかった。やるよ、ブレン!!」 威勢良く啖呵を切ったクルツに、一度目を丸くしたアイビスが目つきを変え、顔つきを変え、答える。 その姿を見たクルツは、いじけにいじけて一周したら良い顔になったじゃないか、と一人ごちた。 ◆ 突然の爆発にラキの挙動は遅れ、一時的にギンガナムを見失っていた。 爆発の余波か、電磁波が入り乱れてレーダーの効きがとんでもなく悪い。視界も立ち込めた薄煙でフィルターをかけられていた。 そして、二度目の爆発が起こる。 耳を劈く轟音と眩い閃光。遅れてやってきた空気の壁が薄煙を吹き飛ばす。 咄嗟に目を向けたその先に、左腕から投げナイフを投げるように光軸を飛ばすギンガナムの姿があった。視線誘導に引っかかったように、光軸が殺到する先に自然と目が向く。 「あれは……ブレンパワード? ……っ!!」 クルツのラーズアングリフと白桃色のブレンパワードをラキが視界に納めるのと、ギンガナムが大地を踏み鳴らし進撃を開始したのは、ほぼ同時だった。 咄嗟に視線を戻す。またしても出遅れた。 猛然と突撃を試みるギンガナムに対し、初動の遅れたラキは間に割ってはいることが出来ない。間に合わない。 が、それはあくまでラキに関してだけのことである。 ラキよりも素早く反応を起こしたネリー・ブレンが跳ぶ。バイタルグローブの流れは一切合財の距離をふいにして、ネリー・ブレンをギンガナムの真正面へと誘う。 ジャッという鋭い反響音。 咄嗟に掲げられたアームプロテクターと唐竹割りに振り下ろされた刀剣の間で、火花が奔る。 「ブレン、弾け! 押し合うな!!」 『緊』と乾いた音を残して、ブレンが飛び退いた。 格闘戦の為に造られたシャイニングガンダムとブレンパワードでは、人で言うところの腕力・筋力がまるで違っている。 だからこそ押し合わずに弾く。単純な力比べでは敵うはずもない。 ならどうすればいい? こんなときにジョシュアならどう戦う? 思案を巡らせる。巡らせるうちに再び身の内で疼き始めたモノを感じ取り、思わず手に力を込めた。両の手はネリー・ブレンの内壁にバンザイに近い形で添えている。 そこはほんのりと暖かい。その感触を肌から感じ取り、ラキはホッと息をつく。 大丈夫。感覚は戻っている。 目も見える。耳も聞こえる。鼻も利くし、ブレンを感じることも出来る。大丈夫。まだ大丈夫だ。 そう何度も自分に思い聞かせた。そしてそこに意識を割かれ過ぎた。 風切り音を残して銃弾が飛来する。それはシャイニングガンダムの頭部に誂られたバルカンの弾。 意識を自分の内側に向けていたのに加えて、光を発するビームとは違い闇に紛れる実弾。視認のしにくさの分だけ反応が遅れた。 回避は間に合わない。だが、この程度の弾ならチャクラシールドで弾ける。 そう思い、チャクラシールドを張る瞬間、スッと右方向に回り込むうっすらと白くぼやけた帯が目を掠めた。 しまったっ! チャクラシールドが展開する。七色に揺れ、輝くチャクラの波に視界が遮られる。透明度の高いチャクラ光ではあるが、その輝度は高い。そして、今は夜。目標を見失う。 バルカンを弾き終わり視界が開けたとき、それは頭上に回りこんでいた。 右方向に注意を払っていたラキは完全に意表を衝かれた形となる。上方から勢い良く突っ込んできたギンガナムに対して、ブレンバーで受けるのが精一杯の反応だった。 だが、真正面から受け止めすぎた。上方からの押しつぶすような巨大な圧力。受け流せない。弾き、飛び退くにしても大地が邪魔になる。 「ブレン、耐えてくれ」 耐える。それが唯一残された選択肢。 足場の舗装道路が砕け、アスファルトの破片が舞い上がる。嫌な音を立ててブレンバーの刀身に皹が走る。 そして、次の瞬間――圧力は消え去った。一条の閃光が眼前を掠め飛び、その対応に追われたギンガナムの機体の姿が遠くなる。 クルツか。そう思った耳に飛び込んできたのは、まったく聞き覚えのない声だった。 「ラキ、これからあんたを援護する」 「お前……は?」 思わずキョトンと呆けたような呆気に取られたような顔になって、ラキは呟いた。突然、モニターの隅に赤毛の少女の顔が映し出されたのだ。 「アイビス=ダグラス。ラキ……あんたを探してた」 「アイ……ビス?」 「うん。あんたに伝えなきゃならないことがある。ジョシュアは……」 「知っている。ジョシュアはお前を守って死んでいった……」 アイビスの言を遮って、ジョシュアの死を口にする。その言葉にモニター越しの顔は俯いて押し黙った。 アイビス=ダグラス、そう名乗る少女の顔を見、ラキは話しかける。 「アイビス、私もお前を探していた。今会えてよかった。そう思える」 「えっ!?」 その声にパッと伏せていたアイビスの顔が上がった。戸惑い表情がそこには浮かんでいる。 微笑みを返す。意図した笑みではなかった。自然と口元が綻んだのだ。 『今』会えてよかった。本当にそう思える。 今ならまだいつもの私のままでいられる。でも二時間後三時間後は分からない。 次の放送を迎えたとき、いつもの自分でいられるという保証はどこにもなかった。 瞼を閉じ、ブレンの内壁に触れる両の手に神経を集中させる。 ほんのりと暖かい。気持ちを落ち着かせ、心を穏やかにさせる暖かさだ。 大丈夫。今の私はいつもの私だ。 「ラキ」 呼ばれて、もう一度アイビスに視線を戻した。そこには戸惑いの色はもうない。 あるのは一つの決意だけ、それが言葉となって飛んで来る。 「ジョシュアの弔い合戦だ。あいつを、ギンガナムを倒すよ!」 あいつにジョシュアは殺されたのか、と思った次の瞬間、ジョシュアはそれを望むのだろうか、とふと疑問が頭をもたげた。 あの時、ジョシュアはギンガナムの名を出すことはしなかったのだ。 「二人で楽しくやってるところ悪いがな。そろそろ奴さん仕掛けてきそうだぜ」 どちらにしても戦わないわけにはいかないだろう。二体のブレンはともかく、クルツのラーズアングリフは損傷が大きそうだ。逃げ切れるとはとても思えない。 思いなおし、ラキはギンガナムを睨みつける。 それにジョシュアがどう思おうと、仇は仇なのだ。ジョシュアを殺した者が生きている。それはやはり納得がいかない。許せないのだ。逃げるという選択肢は今はない。 「ああ、ジョシュアの仇討ちだ!!」 →Shape of my heart ―人が命懸けるモノ―(ver.IF)(3)
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ガンダムF91 機体名 ガンダムF-91 全長 15.2m 主武装 バルカン砲×2 ガンダム十八番の頭部バルカン砲。ミサイル迎撃や目くらまし程度には役に立つ。 メガマシンキャノン×2 肩辺りについてるマシンキャノン。メガとか付いてるけどただのマシンキャノン。 V.S.B.R(ヴェスバー)×2 Variable Speed Beem Rifleの頭文字を取ってつけた略称。ジェネレーターから直接エネルギー供給をし、発射する可変速ビームライフル。最大の特徴としてはビームの収束率を変え、威力は低いが極端に早く貫通力があるビームや弾足は遅いが威力の高いビームなどの撃ち分けが出来ることが挙げられる。最大出力は戦艦の主砲を上回り、ある程度の出力でもあっさりビームシールドを貫くほど。宇宙世紀最強のビーム兵器である。本来はMS固定武装なのだが、F-91のは取り外しができ、数発発射可能(出力次第だが2~3発が限度)。ただしジェネレータからのエネルギー供給という利点が失われる。だが連結では射角制限が起きる(180度が限度)、他にもジェネレーター直結なためエネルギーの消費が著しいなど課題も多い武装。 ビームサーベル×2 普通のビームサーベル。シーブックはサーベルを持ったまま手の部分を回転させビームローターのように使ったこともある。 ビームライフル 普通のビームライフル。出力が高く、ベルガ・ダラス(だっけ?)を二機一辺に落すほど。 ビームランチャー 普通のビームランチャー。威力が高い。 特殊装備 バイオ・コンピューター F91に搭載されたコンピューター。パイロットの技量を分析し、搭乗者に技術にあった最大効率を引き出してくれる。逆に、パイロットの技量が機体の最大稼動に対応できるとコンピューターが判断しない限り最大稼動で行動できないというデメリットも。 バイオセンサー Zについてたアレ。分子認識機構を利用した科学センサーのとこ。 サイコフレーム νについてたアレ。実際搭載している訳ではないが、似たものを搭載している。 ビームシールド この時代の主流シールド。エネルギー消費が激しいが、対実弾、対ビームにおいて強大な防御力を誇っている。 MEPE現象 Metal Peel-off effectの頭文字を取ってつけた略称。金属剥離効果の事。バイオコンピューターがパイロットが最大稼動に対応できると判断した場合に、肩や足の放熱フィンとフェイスガードが展開し、最大戦速でもオーバーヒートしないように熱を放出する。その放出される熱によって金属片が剥離され、移動した際にその金属片が擬似的ではあるが形をその場に残し、残像を作り上げる。この状態の場合、センサーを見ても金属片が熱量を持っているためセンサーが反応し、あたかも分身しているように見える。故にカロッゾは「質量を持った残像だというのか!?」と泡食っていた。ある意味チャフに近いかもしれない。 移動可能な地形 空中○、陸地○、水中△(?)、地中× 備考 フォーミュラ計画の中で作られた機体。正式にはガンダムという名は付いていない。「現段階(宇宙世紀123)でのモビルスーツの限界性能の達成」を目標に作られ、サイコフレームもどきやバイオセンサーもどきなど今までの技術もふんだんに使われている。また、新型核融合炉とIフィールド整形技術の採用により、従来のガンダムより小型でかつ高性能である。映画本編ではシーブック・アノーが搭乗し、コスモ・バビロニア戦争に大きく貢献した。余談だが、この機体が飛べる理由として試作型ミノフスキードライブが搭載されていると言う明らかな後付設定があるが、閃光のハサウェイの時点でミノフスキードライブは完成しているという矛盾点が発生する。閃ハサは黒歴史ですか、そうですか。F-91に搭載しているサイコフレームもどきはマルチブル・コントラクション・アーマーといい、コンピューターチップを素粒子大にして埋め込むだけでなく、複数の構造材や内蔵電装機器を装甲に取り込むという一種の強化案である。バイオコンピューターはその搭乗者の技量を超えた出力を出さないためのリミッターも兼ねている。F-91はあまり関係ないが、F-97ことクロスボーンX1はF-91同様フェイスオープンしMEPE現象に近いことをしている。が、そのとき戦っていたF-91のパイロットのハリソンはそのことに全く触れなかったため、単なる演出説が浮かんでいるF-91-MSVにおいてヴェスバーなしでもほぼ同様に戦えるように4連ビームガトリングガン、ミサイルランチャー(対艦ミサイル付き)を組み合わせた武装(名称不明)を二基搭載し、ショルダーアーマーの強化、アポジモーターの増量を図ったパワードウェポンタイプ、元々搭載しているヴェスバーを更に二丁増やし、ビームシールドも両腕に搭載したダブルヴェスバータイプが存在する。
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ドラグナー2型カスタム 機体名 ドラグナー2型カスタム(D-2カスタム) 全長 16.8m 主武装 88mmハンドレールガン ドラグナー主流の携帯武装。口径はD兵器の中では一番大口径。弾数は600発ぐらい。公式によると一分で1450発も撃てるらしい。 640mmレールキャノン×2 D-2最大の特徴である大型レールガン。かなりの長距離から狙撃できる。弾数は200前後と多め。中の人一緒だし九鬼には「轟け~!」とか「どすこ~い!」とか言ってもらいたいとか思ってしまう。まず無いだろうが。 マルチディスチャージャー×2 背面に設置したグレネード。煙幕、チャフ、フレアと多彩な使い道がある。 10連デュアルミサイルポッド×2 両ウィング搭載された十連装ミサイル。追尾効果はそこそこだと思う。 2連へビィデュアルミサイル×2 両足に搭載した二連装ミサイル。仕様用途は十連ミサイルと変わらないと思う。 アサルトナイフ×2 D-2唯一の接近戦武器。子供が真似すると危ないからと、アニメ中では一回も使われてない。 2連装25mm機関砲×2 腕についてる機関砲。カスタム以前は背後についており、リフターを付けてる状態では使えなかった。 75mm2連連装自動砲 一応公式に載ってたから掲載したがどこについてるか不明。 光子バズーカ カスタム化最大の特徴である高出力バズーカ。バズーカについているプラグを機体に刺しこみエネルギーをチャージ、そして発射する。D兵器の武装で唯一機体からエネルギー供給をする武装。 特殊装備 クレイ9000型AI D兵器に搭載されている超高性能AI。これのおかげで戦闘のド素人であるケーン達がギガノスと互角に戦えた。なおこのコンピューターは初期起動の際にその時点の乗り手をパイロットと認識し、その認識された人物以外が乗っても起動されない。だが特殊な措置を施せば認識の削除は可能。ちなみにD-2のAIの愛称は『ソニア』 移動可能な地形 空中○、陸地○、水中×、地中× 備考 ドラグナー開発者のラング・プラート博士がD-2を改修し、本機ができる。改修とは名ばかりで、ほぼ新造に近いパワーアップが施されている。D-2の特徴であった火力を更に向上させ、それに伴い装甲、機動性も上昇している。長射程高出力にして高機動と正に『移動砲台』である。
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◆ 素早く、それでいて非常に巧緻に長けた剣閃が迫って来る。受け止め、受け流す。数合切り結ぶ。そして引き際に小さく、それでいて鋭く剣を振るった。空を斬る感触に臍を噛む。 再び距離を開けての対峙。長く細い息を吐く。 手ごわい。少なくとも刃物の扱いに関してはギンガナムを上回り、自身と拮抗していると言っていい。さらに、その妙を得た動きには目を見張るものもある。 黒い機体の後方のただ一点だけを睨みつけ、剣を構える。ギンガナムと他の二機が戦闘を繰り広げている場所だった。そこだけを見ている。目的は一つ。 この黒い機体を避わし、その場へ急行する。 然る後、ギンガナムにこの機体の相手をさせ、他の二人を説き伏せる。それが最善手。 下手にここで戦闘を繰り広げても意味はない。まして、ラプラスコンピューターが破損するようなことがあれば、それは致命的だ。それだけは避けねばならない。 その上で、ギンガナムとあの二人の溝が修復不能になる前に舞い戻らなければならなかった。それが課せられた課題なのだ。 「難儀な話だな……」 「あん? 何がだ?」 「いや、なんでもない」 黒い機体の膂力はギンガナムの機体とほぼ互角。速力と大きさもだ。外見的にも幾らか似通っている。恐らくはこれもガンダムと呼称される機体なのだろう。 力では相手、素早さでは自分ということになる。 全く肝心なときにいない男だ。このような相手こそギンガナムにうってつけであり、黒歴史とやらの知識も役立つというものだというのに。 それを生かすには目の前の男を突破する他ない。 隙は見えない。それでも突破せねばならない。それも速やかに、被害なくだ。心気を澄ませる。掌に刃の重さを感じ、そして、ブンドルは一陣の風となって駆けた。 「悪いが押し通らせて頂く」 「させねぇよ」 ◆ 廃れ、荒れ果てた廃墟で閃光が瞬き、光軸が飛び交う。音響がさらなる音響を導き、廃墟に似つかわしくない喧騒が辺りを支配している。 白桃と浅葱、二色のブレンパワードが織り成す連携を受け、ギンガナムは劣勢を強いられていた。 蒼い機体が視界から消える。ゾクリとしたモノを感じて、振り向き際に左拳を振るった。 頑強な金属音が響き、真っ向から接触する拳と剣。 蒼いほうが動きを変えていた。 それまでの自機の非力さを悟り、単純な押し合いには決して持ち込ませまいとする態度から、真っ向から力勝負を挑むような我武者羅さに変わっている。 二機の足が止まる。押し合い圧し合いの純粋な力勝負。ならばギンガナムに負ける道理はない。 押し切れる。そう思ったその瞬間、白桃色の機体に割って入られ、あえなく距離を取る。 「ちっ!」 蒼い機体がギンガナムを一点に押し留め、足が止まるその隙を白桃色の機体が衝いて来る。 それが相対する二機の基本戦術だった。 まったくもってうっとおしい。決め手の放てぬ戦いというのはストレスが溜まるものだ。 だが、ギンガナムは笑っていた。 こういう戦い方もあるのか、という好奇の心が疼いていた。これは一対一では知りえぬ戦い方なのだ。 愉快だった。こみ上げてくる感情を抑えることが出来ない。今、確実に生きていると実感できる。そのことが堪えようもなく愉快だった。 ギム=ギンガナムは、月の民ムーンレイスの武を司り、勇武を重んじるギンガナム家の跡を継ぐべき存在として生れ落ちてきた。 それを当然のように受け入れ、幼少の頃から鍛錬に勤めてきたギムの誇りは、しかし158年前の環境調査旅行を境に裏切られることとなる。 月に帰還したディアナ=ソレルに軍を前面に押し立てた帰還作戦を主張したギムの父の言が、一言の元に退けられたのだ。 同時に『問題の解決に武力を使うことしか思いつかない者は、過去、自らの手で大地を死滅させた旧人類の尻尾である』と言葉を被せられ、ギンガナム家は軍を没収された。 以後、自害した父に代わりギンガナム家を統治することとなったギムであったが、そこには望んだものは微塵も残されておらず、虚しさだけが胸の内を占めていた。 そして、120年前、30代の終わりに差しかかったとき、ギンガナムの鬱屈が限界に達することとなる。離散していた旧臣を集め、クーデターを企てたのだ。 だが、事を起こした末路に待っていたのは無残な敗北だった。結果、形だけの裁判の末、永久凍結の刑に処され、120年の眠りに付くこととなる。 つまり押し込められ、追いやられ、爆発するも報われず、死んだように過ごしてきたのが彼の半生であった。 しかしだ。彼はここに来て生を実感していた。 幼い頃に夢見た乱世がここにある。血湧き肉踊る戦いがここにはある。心憧れた、絵巻物の中の存在に過ぎなかった黒歴史の英霊達がここには存在する。 そして、なによりも今自分は闘っている。闘っているのだ。これほど嬉しいことがあるか。 生まれて初めて、生が実感できる。生きていると思える。幼少の頃に望んだ自分が今ここには存在しているのだ。 だからこそギンガナムはこみ上げてくる歓喜の声を抑えることが出来なかった。 気持ちが高ぶる。全てがよく見える。体に力が漲っているのが実感できた。そして、それに呼応するかのようにシャイニングガンダムの出力が上昇していく。 想いを力に変えるシステム。まったく良く出来た相棒だ、と一人感心する。 相手は二機。蒼が動きを押し留め白桃が隙を衝いて来るのならば、白桃から先に始末するだけのこと。そう思い定める。 蒼が消える。それを合図にギンガナムは猛然と突撃を開始した。 「芸がないな。マニュアル通りにやっていますというのは、アホの言うことだ! このギム=ギンガナムにぃ、同じ手がそういつまでも通用するものかよぉっ!!」 ◇ 突然、弾丸のように突撃を開始したギンガナムを見て、アイビスは考えたものだな、と一人ごちた。 ラキのバイタルジャンプは多少の揺らぎを持たせてはいるものの、死角への移動を基本としている。そして、攻撃は組合に持ち込むための剣戟が主体。 つまり、消えた瞬間に視界が開けている方向に高速で突っ込めば、攻撃に晒される可能性はきわめて低いのだ。そこを衝かれ、なおかつこちらに狙いを定めてきた。 ならばどうする? 決まっている。 (ブレン!) (……) (やるよっ!!) 今度は自分がギンガナムの打撃を受け止め、力勝負に持ち込み、ラキに隙を衝かせる。役どころが入れ替わった。ただそれだけだ。 歯を食いしばり、アイビスは受けの姿勢を取る。巨岩のような圧力を放つギンガナムを目の前に、大地をしっかりと捉え、構える。 「アイビス、受けるな! 避けろっ!!」 クルツの声だったが、遅かった。一度止まった足を動かすには彼我距離が近すぎる。 ならば、とソードエクステンションを両の手で掲げ、受ける。接触の瞬間、刀身を反らし、受け流す。受け流したはずだった。 天と地が逆さまに、視界が反転する。 巨大なダンプ、あるいは列車に撥ねられた人間のように錐揉み回転をしながらヒメ・ブレンが宙を舞う。 ブレンが大地に打ち付けられ、アイビスもまたコックピットにその身を激しくぶつけられる。意識が明滅し、追撃を予想して身を固くした。 が、次の瞬間襲ってきたのはギンガナムの追撃ではなく、クルツの怒声であった。 「馬鹿野郎! 真っ向から受け止めるなんて正気か?」 クルツの顔面越しに投影されたモニターには、ギンガナムと交戦を続けるラキの姿があった。恐らくは追撃をかけられる前に割って入ってくれたのだろう。 結局はまだ足を引っ張っている。その口惜しさが拳を固くした。 「うるさい。ラキは同じブレンパワードで止めてる。なら、私だって……」 「お前には無理だ。あれはお前には向いてねぇ、俺にもだ」 アイビスの抗弁をクルツは軽く受け流す。 そう。アイビスとラキでは受け方が違う。というよりラキの受け方が少々特殊だった。 通常の受けは相手に押し負けぬように足場を、土台をしっかりと安定させて受け止める。 対して、ラキはその場で受けようとせずに前に出る。受けるというよりはぶつけに行っていると言ったほうが正しいのかもしれない。 相手の一番力が乗るところでは決して受けず、前に出ることで打点をずらし、力を半減させ、自身の前に出る力をそこに上乗せさせる。言葉にすればそんなところだろう。 だが、それでようやく五分。いや、それでも四分六でギンガナムの膂力のほうが強いのだ。真っ当な受け方では勝負にならない。 だから今モニター向うのラキは、受けの後瞬時に弾き距離を置く戦い方に戻していた。一機でギンガナムに抗うには、そうする他はない。 (ブレン、悔しいね……あいつらには出来て、私らには出来ない) 俯き、ブレンの内壁に添えた手にギュッと力を込める。 悔しかった。他人には出来て、自分には出来ない。それは落ちこぼれと言われているようで悲しい。悔しい。そしてなによりも自分の不甲斐なさは腹立たしかった。 そんな思いがその手には込められている。 「アイビス、ラキを羨ましがるんならお門違いだ。だが、そうじゃねぇ。そうじゃねぇだろ? ラキにはラキのブレンの扱い方がある。だったらお前にはお前なりのやり方ってもんがあるだろうが。違うか?」 「私なりの……やり方?」 見透かしたように掛けられた声に驚く。考えたこともなかった。 人を羨むのではない自分なりの乗り方。スレイにでも、ラキにでも、誰に対するでもない自分なりのやり方。こんな何でもないことなのに、考えたこともなかった。 No.1に対するNo.4。負け犬という別称。流星という不名誉な字。それらに引け目負い目を感じてきたのは、知らず知らずのうちに誰かに対する自分を意識していた証なのかもしれない。 「クルツ」 「ん?」 「ありがと。ただのスケベ親父じゃなかったんだ」 「おいおい、親父はよしてくれ。俺はまだ二十代だぞ」 「そっちに反応するんだ」 軽口を叩き、笑い、顔を上げる。目にキラリと光が灯る。また一つ憑物が取れた。そんな顔だった。 (……) (ブレン?) (……) (うん。わかった。やってみよう!) いつからかブレンの声が聞こえるようにもなっている。普通に会話も出来る。そのことに未だ気づかぬまま、アイビスは声を張り上げた。 「いくよ、ブレン!!」 視界の先には、ギンガナムに押しやられ、ついに体勢を崩したネリー・ブレンの姿がある。 そこへ跳び、ネリー・ブレンの真横にジャンプアウトした。叫ぶ。 「ラキ、ブレン同士の手を合わせて!」 「手を?」 「早く!!」 ギンガナムとの距離は既に幾許もない。そんな中、二機のブレンパワードが手をつなぎ、胸を張る。 次の瞬間に顕現するのは二体のブレンパワードが張り巡らすチャクラの二重障壁――ではなく、ただ一重のチャクラシールド。 しかし、二つのチャクラが混ざり合うそれは、強固な分厚い壁である。打ち付けられた拳とチャクラの間で火花が散り、拳を弾かれたギンガナムの姿勢が仰け反るような格好で崩れた。 その瞬間、ヒメ・ブレンは飛び出し、真っ直ぐに距離を詰める。 「ギンガナム、あんたは私の行為を偽善だと言った。でもね、人の為の善と書いて偽善と読むんだ!! なら、私はジョシュアのためにあんたを討つ!!!」 体勢が整う前に畳み掛けると決めていた。擦れ違い様にソードエクステンションによる横薙ぎの一閃。 しかし、ギンガナムもさすがと言うべきか、体勢が不完全ながらも咄嗟にアームカバーを構える。 固い金属音が鳴り、受けたギンガナムの体勢が完全に崩れ、仰向けにひっくり返った。この好機、逃す手はない。 「ラキ、合わせるよ! やり方はブレンが教えてくれる」 「ブレンが? ……ひっつく? くっつくのか?」 二機で小規模なバイタルジャンプを繰り返し、翻弄し、体勢を立て直させる隙は与えない。ラキが次の瞬間何処に現れるのか、それはアイビスにもわからない。 しかし、決め手を放つ瞬間、どこに現れ、どうすれば良いのか、それはブレンが全て教えてくれた。 「1・2・3」 タイミングを計る。体勢の崩れたギンガナムの右後方。ドンピシャのタイミングで二機はそこに現れた。 背中が合わさる。ブレンバーとソードエクステンションが、鏡合わせのように突きつけられる。その動きには寸分のズレさえも存在しない。 「チャクラ」 「エクステンション」 「「シュートオオオォォォォオオオオオオオオオオ!!!!」」 二つの銃口に光が灯り、濃密で重厚なチャクラの波が放たれる。巨大な破壊の力を携えたそれが、堰が決壊し氾濫した濁流の如くギンガナムへと猛進していく。 その光景の最中、突如として覇気に満ちた笑い声が大地を震撼させた。 「ふはははは……。これをおおぉぉぉ待っていたっ!!」 そう。ギンガナムはこのときを待っていた。かつて相対した男が最後に放つはずだった一撃。 それに酷似したこの一撃を真っ向から打ち破ることには二重の意味がある。すなわち、この戦いとあの男との戦い、二つの勝利。 「貴様らが七色光線ならばぁぁ、小生は黄金の指いいいぃぃぃぃいいいいいいいい!!!」 押し包み、瞬く間に呑み込まれて消えるその刹那、ゆらりと起き上がったシャイニングガンダムは左腕を無防備に突き出した。その指間接が外れ、隙間から染み出した液体金属がマニピュレーターを覆い、発光。そして―― 「喰らえっ!!! 必いいぃぃぃ殺っ!!! シャアアアァァァイニングフィンガアアアアアアァァァアアアアアアアアアアアア!!!!」 その光り輝く左腕が荒れ狂うチャクラの波に真っ向からぶつかった。 真っ直ぐに伸びたチャクラエクステンションが、ギンガナムがいる一点で遮られ四方に拡散する。拡散した幾筋ものチャクラのうねりは大地を抉り、暴れ、阻むもの全てを破壊する。 だが、それで終わりではない。三者の激突は未だ続いている。チャクラエクステンションはシャイニングフィンガーただ一つで抑えきれるほど甘くはない。 強大な圧力に押さえ込まれ、ギンガナムは前に出ることが出来ない。いや、むしろ押されている。 重圧を一点で受け止める左腕は断続的に揺れ、ぶれ動き、機体を支える両脚は爪のような跡を残しながら徐々に後ろへと押し流され、爪跡はチャクラの濁流に呑まれて消え去る。 このままでは押し切られ、呑み込まれるのは時間の問題なのだ。だがしかし、ギンガナムに諦めの色はない。あるのはただ狂気的とも言える喜色のみ。 「ぬううぅぅぅぅぅぅっ!! 見事! まさに乾坤一擲の一撃!! 実に見事な一撃よ!!! だがなあぁぁぁっ!!!! この魂の炎! 極限まで高めれば、倒せない者などおおぉぉぉぉっないッッッ!!!!!」 押し流され続けるシャイニングガンダムの足が止まる。エンジンの出力が上がり続け、背面ブースターが限界を超えてなお唸りを上げる。 「シャイニングガンダムよ。黒歴史に記されしキング・オブ・ハートが愛機よ。お前に感情を力に変えるシステムが備わっているというのならああぁぁぁっ! 小生のこの熱き血潮!! 一つ残らず力に変えてみせよおおおぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!」 そのギンガナムの雄叫びを合図に、それは始まった。 機体の色に変化が生じる。白を基調としたトリコロールカラーから、色目鮮やかな黄金色へ。そして、機体を構成する全てのものが眩く発光を始め、闇夜を切り裂くチャクラ光の中に黄金が浮かび上がる。 変化は外見のみに留まらない。充溢する気力を喰らい天井知らずに上がり続ける出力は、計測器の針を振り切り、それを受けた推力は前進を可能にしていたのだ。 「ふはははは……このシャイニングガンダム凄いよ! 流石、ゴッドガンダムのお兄さん!!」 爆発的なスラスター光を背に感嘆の声を上げ、七色の輝きの中に飛び込んだギンガナムは激流に逆らい、遡上を始める。 その様は鯉の滝登り等という生ぬるいものではない。天を衝くが如き勢いと圧力を持って遡上し、そして、金色の光がチャクラの波を衝き抜けた。 「なっ!」 阻むものを失ったギンガナムの突進は、限界まで引き絞られた矢が飛び出すようなもの。 弾ける勢いでヒメ・ブレンの頭部を掴んだギンガナムは一筋の閃光となり、建ち並ぶ廃墟の群を物ともせずに突き破る。そして、その終着でヒメ・ブレンを天高く掲げ―― 「絶っ好調であるっ!!!!」 爆発。轟音を残して頭部を粉砕されたヒメ・ブレンが崩れ落ちる。同時に背後で異音。俊敏に反応し、振り向き際に蹴り飛ばした。 ◇ 蹴り飛ばされたネリー・ブレンが瓦礫の海に埋没する。息を弾ませ、衝撃から来る苦痛にラキは顔を歪ませた。 虚を衝いたはずの視覚外からの攻撃にも対応してみせる油断のなさ。加えて、奴の言をそのまま信じるのならば、あの闘争心がそのまま反映されるシステム。 つくづく厄介だというのが、率直な感想だった。 そう考えて、ふと自分らも似たようなものか、という思いを抱いた。アンチボディーはオーガニックエナジーを糧に動く。そこには人の放つものも含まれているのだ。 ならば、自分やアイビスの感情もまたブレンに力を与えているのだろう。そう思った。 (ブレン、すまない。大丈夫か?) (……) (よし) 心を落ち着け、ブレンに声をかけると立ち上がらせる。その姿を前にギンガナムから通信が飛んできた。 「ほう。まだ戦う意志を失わぬか……見上げた根性と誉めてやろう。どうだ? ギンガナム隊に入らぬか?」 「悪いがお断りだな」 「ならば死に物狂いで戦うことだな。それにここで小生を倒せばジョシュアとやらの魂も救われるかも知れぬしなぁっ!!」 「ジョシュアはそれを望まない。人には戦いなど必要ないんだ」 本心だった。ジョシュアの弔いの為と思い定めて戦いはしても、どこか違うという思いは常について回っている。 不意にギンガナムが動く。早い。咄嗟に拳をブレンバーで受け止める。 「それは違うな。人は己の内に闘争本能を飼っている。 それを解き放つために戦いは必要なのだ! その為にこのような場が用意されている!!」 「本能の赴くままに戦い続ける姿のどこに人間らしさがある!」 言葉を返し、弾き、距離を取る。意外なほどブレンの掌に伝わる重みは軽かった。遊ばれている。咄嗟にそんな思いが頭を突く。 揺れ動き、翻弄させるような動きを取りながら、ギンガナムが言葉を吐く。その口調には言葉遊びを愉しむような余裕が込められていた。 「ならば聞く! 水槽の中で飼われている魚のような生のどこに人間らしさがある!!」 「どういう意味だ」 「外敵もなく、餌も十分に与えられ、安全で平和な住みやすい環境。それを世界の全てだと思い込んでいる。まるで飼われた魚の様ではないか。 だがなぁ、人間はそのような環境に息苦しさを覚える。だからこそ、ディアナは地上へ帰ることを望んだ。 だからこそ、このギム=ギンガナムは戦い、戦乱をもたらすのだ。人として生きる為になぁっ!!」 突如動きが変わり、強烈な一撃がラキを襲う。それをブレンバーで受け流し、攻撃に転じながらラキは反論を返す。 ギンガナムの言を受け入れることはジョシュアの、人として生きようとした自分の生き様を否定することだ。それは、死んでも受け入れることはできない。 「それは違う。確かに人は生きるために戦うことがある。憎しみにまみれて道を見失う者もいる。 だけど、それだけが人じゃない。それを私はジョシュアから、人から学んだ」 「だが、貴様は戦っているぞ!!」 受けたギンガナムが言う。シャイニングガンダムとネリー・ブレンの双眸が、ギンガナムとラキの眼光がぶつかり火花が散った。 巨大な重圧を伴ってギンガナムは圧し掛かってくる。そのギンガナムの言葉には迷いがない。だからこそ強く、なによりも危険なのだ。気を抜くと押し切られそうになる。 「そうだ。私は戦っている。私はメリオルエッセ……負の感情を集めるだけの働き蜂。所詮、人にはなれない。だから――」 唇を噛み締めて言う。渾身の力で押し返し、再び距離を取ったところで泣き出しそうになり、思わず言葉を区切った。 人にはなれない。それはある意味では分かっていたことだ。いくら憧れ、恋焦がれようとも、蛾に生まれついた者が蝶になることは適わない。 同じだ。私もメリオルエッセに生まれついたからには、人になることなど適わないのだ。 分かっていた。分かっていたが、どこかでそれを受け入れてない自分がいたことは、確かだった。 それなのに、今自分の言葉で肯定し、受け入れてしまった。それがどうしようもなく悲しい。 でも、それよりも受け入れ難いことが存在する。だからこそ泣き出したい思いで受け入れた。 人は私とは違う。私の周りにいた人は、負の感情を集めるためだけに作られた私に、それだけが人ではないと教えてくれた。 そんな人間が、憧れ恋焦がれた人間が、戦いを自ら望むような者であって良いはずがない。 私の傍にいた人が与えてくれたぬくもりは、そんな人からは決して得られないものだ。そう信じたい。 「だからこそ、貴様は私の手で止めてみせる!!」 「それは結構。だが、できるのか? このギム=ギンガナムをぉ!!」 切り結び、跳び、かわし、攻め、守る。目まぐるしく入れ替わる攻防ではあったが、バイタルジャンプを多用してようやくギンガナムの動きについて行けるという状態だった。 初手を合わせたときから比べ、ギンガナムの気力は満ち溢れている。それに伴ってシャイニングガンダムの基礎能力が桁外れに上がっていた。 対し、ラキの操るネリー・ブレンは少しずつ消耗し、痛み始めている。ラキ自身も似たようなものだ。 それでも方法はあった。死ぬ気になればやることができるただ一つの方法が。 (……) (ブレン、落ち着け。仇は私が討たせてやる。それと私に遠慮はするな) (……) (恍けるな。お前が私を気遣ってくれているのは分かっている。でも、それじゃ駄目なんだ) 分かっていたことだ。ネリー・ブレンが自分を気遣い、自分の周辺に集まり渦巻いている負の感情のオーガニックエナジーを主として動いていたことは。 それはラキの負担を減らすためだろう。それに造られた生命であるラキのオーガニックエナジーは、自然の生命に比べると驚くほど希薄で弱いのだ。だがそれでも―― (……) (いいさ。ここで全て吸い尽くしていけ) (……) (すまないな。ありがとう) ブレンの説得を終え、しかし、息をつく暇もない。攻防は続いているのだ。 視界の端でギンガナムを捉えつつ、隙を見て通信をヒメ・ブレンへと試みる。 頭部を失ったヒメ・ブレン相手に通信が繋がるか不安はあったが、程なくそれが要らぬ心配だったということが証明された。通信は繋がった。 「アイビス……無事か?」 「うん。私は大丈夫。でもブレンが……ブレンが私のせいで……」 ギンガナムの攻撃を受けるその一方で盗み見たアイビスの表情は暗く沈んでいる。 アンチボディーは半分機械半分生物という特殊な存在だ。頭部を失うということは死を意味している。 それを自分のせいだと思い込み、責任と重荷を背負い込んでいるといった感じだった。その姿に一瞬頬を緩ませる。 やはり人間は優しく暖かいのだ。ブレンはきっとそんな人の優しさに魅かれたからこそ、人を必要とする体に生まれたのだろう。そう思った。 その一方で、無理だろうなとは思いつつ慰めの言葉をかける。 「気にするな。お前は精一杯やった。だれもお前を責めやしない。お前のブレンもきっとお前を恨んでやしない。 そして、これから起こる事もお前のせいではない。だから、気に病まないでくれ……そうなると、私は悲しい」 「えっ?」 伏せていた顔が上がるのを目の端が捉えた。バルカンを二発三発とかわしつつラキは言う。 「……私のブレンを頼む。こうみえても寂しがりやなんだ。きっとお前の力になってくれる」 「ラキ、あんた……」 「ジョシュアが最後に守った者を私も守れる。それだけで十分だ」 「違う。違うよ……ラキ」 顔を左右にふるふると振るわせるアイビスを無視して、言葉を続ける。 自分の声が湿り気を帯びていくのに辟易しながらも、どうすることも出来ない。 「アイビス、会えてよかった」 「ラキ、ジョシュアが本当に守りたかったのは私じゃない! あんたなんだ!! だから、だから一緒に生き延びよう……二人で生き延びる道もきっと見つかるからっ!!!」 耳に飛び込んできた声にハッと目を見開き、俯いた。出来ることならそうしたかった。でも目の前の現状はそれを許すほど甘くはない。 だから、ラキは一度だけギンガナムから視線を外し、アイビスを見て声を掛ける。努めて明るく、精一杯の笑顔で。 「本当はもっと落ち着いて話がしたかった。でも時間がない。アイビス、お別れだ」 「ラキ!!」 「盛り上がってるとこ悪いがな。お前らは死なねぇよ」 「「クルツ!!」」 突然割って入った声にラキとアイビス――二人から驚きの声が上がった。そんな二人に構うことなくクルツは飄々と言葉を繋げる。 「ラキ、お前がろくでもないことを考えてるのは分かってる。でも悪いな。こいつは俺が貰う。お前はアイビスと行け」 「何、無茶なことを言っている。その半壊した機体でこいつを押さえられるはずがないだろう」 「無理だよ、クルツ。あんた一人ならまだ逃げられる。機体が動くのなら逃げて」 「うるせぇっ!!! うるせぇよ……行きたいんだろ? 本当はそいつと行きたいんだろうが!!!」 「それは……」 言い澱み、覚悟が揺らぐ。 諦めたはずの先を突きつけられ、そこにいる自分を連想してしまい生きたいという衝動が膨らむ。思わずクルツの言葉に縋りつきたくなり、浅ましいと自分で一喝する。 そんな心の機微を見通してか、クルツは言葉を畳み掛けてきた。 「行けよ。とっとと行っちまぇ! いいか? 勘違いするんじゃねぇぞ。俺はお前の代わりにこいつの相手するんじゃねぇ。誰かの代わりなんて真っ平ごめんだ。 俺は俺が好きでこいつの相手をするんだ。こいつは俺の我侭なんだよ。あいつと一緒に行くのはお前の我侭だ。だったら、我を張れよ。押し通せ。 会ったときからお前は我侭尽くしだったんだ。いまさら変に遠慮なんてしてんじゃねぇっ!!」 「しかし、お前は……」 「俺は俺の我を通してここに残る。お前はお前の我を通してあいつと行く。それで全部まとめてオールO.K。円満解決。大団円だ。違うか? 違わねぇだろ。 分かったか? 分かったら、さっさと行っちまえよ。お前らがいると邪魔なんだよ。気になっちまって、切り札が切れねぇ」 「ならばそのカード、小生が切りやすくしてやろおっ!!」 「ッ!!」 クルツに気を取られすぎていた。気がつけばギンガナムが間近に迫っていたのだ。 近いっ! 近過ぎる。回避も何も、全てが間に合わない。直撃? 当たるのか? くらうのか? くらえば―― 豪腕を目前にぞっと全身が怖気立ち、肝が冷えた。思わず目を閉じ、首を竦める。身を固く小さくして来るべき衝撃に備える。 しかし、その瞬間はついぞ訪れなかった。変わりに怒声が飛んで来る。 「何やってんだ! 早く行け!! ちんたらしてんじゃねぇ! 今すぐ走れ!!」 恐る恐る開けた視界に、いつの間に忍び寄ってきたのか、ギンガナムに背後から組み付くラーズアングリフの姿が映しだされる。 「ク……ルツ?」 「さぁ行け! 行くんだ! 行って、俺の代わりに二人であの化け物に一発かましてこい……頼んだぞ」 目が合い、気圧された。その目には一本の筋が通った、ぴんと背筋の伸びた胸に迫る何かがある。 それに抗おうと胎に力を込めたが、一度揺れた覚悟はそれを押し返すまでの強さを持ってはいなかった。 乾いた口が動く。何度か唾を飲み込み、何度も言葉を喉元で押し殺したその口は、しかし最後には辛うじて聞き取れる程度の声で喉を震わせた。 「……すまない。頼む」 「いいってことよ。任せろ」 陽気な、いつもと変わらぬ声が耳朶を打つ。悲壮さなど微塵も感じさせない、ちょっとした用事を引き受けるような、そんな声だった。 クルツとギンガナムに背を向け、ネリー・ブレンが跳ぶ。 決めた以上、戸惑ってはならない。速やかに動かなければクルツの覚悟に水をさすことになる。それが、似たような覚悟をほんの少し前まで決めていたラキには、痛いほど分かっていた。 ジャンプアウト。物言わぬヒメ・ブレンを抱え上げる。アイビスが文句を言ってきた。その気持ちも、やはり痛いほどに分かる。 だがそれに耳を貸すわけにはいかない。例え恨まれようと構わない、とラキはその場からの離脱を開始する。 普通に長距離のバイタルジャンプを行う余力は、もう残されていなかった。 ◆ 赤い戦車のような人型機動兵器が投げ飛ばされ、瓦礫の海に埋没した ラキとアイビスが離脱を開始して数分。ずぶずぶと上下逆さに埋没していく機体の中、クルツは一人ぼやく。 「やれやれ、こんなつもりじゃなかったんだけどな。こういうのを親心って言うのかね」 本当に初めて会ったときから世話のかかる奴だった。意見は食い違うわ、一度決めたら梃子でも動かねぇわ、自分勝手に動き回るわで、本当に面倒ばかり掛けやがる。 でも気持ちのいい奴らだった。 にしてもついてねぇな。こんなとこに呼び出されてまでして、俺、何やってるんだろうな……。 「……まぁいいさ。悪かぁねぇ」 がばっと起き上がり、コンクリートの破片を跳ね除けながら呟いた。 ああ、そうさ。悪かぁねぇ。女を守って死ぬ。男として最高の死に様じゃあねぇか。あんたもそんな気分だったんだろ? ジュシュア=ラドクリフ。 ふぅ~っと長い息を吐く。横目でちろりとこれから命を賭ける相手を見やり、リニアミサイルランチャーを突きつける。 「悪いな、大将。俺の我侭に付き合ってもらってよ」 「貴様がその半壊した機体で何をするのか興味があってな。だが、空の銃では小生は倒せぬ。そこのところは分かっているのか?」 クルツが最も懸念していたこと、それは無視をされ二人の後を追われることだったが、どうやらその心配はなさそうだった。人知れず胸を撫で下ろす。 敵さんは、こちらの手札に興味津々なご様子。ならどうすればいい? 簡単だ。挑発して好奇心を呷ってやればいい。そうすればもう少し時間を稼ぐことが出来る。 「知ってるか? プロってのは、弾を撃ち尽くしても最後の一発ってのは取っておくもんだ。本当にどうしようもなくなっちまったときに自分の頭を撃ち抜く為にな」 「下らんな。己の頭を自ら撃ち抜くぐらいなら、その一発で相手を倒すことを考えるべきだ。 最後まで相手の喉下に喰らいついて初めて一人前の兵士と言える。貴様もそうだろう……違うか?」 「そういう考え方もありっちゃありなんだが……。勿体つけといて悪りぃんだけど、実は弾なんか残っちゃいねぇんだな、これが」 リニアミサイルランチャーを手放す。瓦礫で跳ねたそれが乾いた音を立てた。 からかわれたとでも感じたのかモニター越しの表情が怒り、睨みつけてくる。想像以上に単純な奴だ、とほくそえんだ。話術では負ける気がしない。 「短気は損気。そう怒りなさんなって……。代わりにギンガナム、あんたには別のもんをぶつけてやるよ」 「ふんっ! 貴様のごとき雑兵の命一つで小生を止められると本当に思っておるのか?」 完全に臍を曲げたらしい男を前に急にクルツの目つきが変わった。 「馬鹿言っちゃいけねぇな。あんたに生き残られちゃ、せっかくのお涙頂戴シーンが台無しだ。 それになぁ、お前さん自分のこと買いかぶり過ぎだ。こちとら戦争屋。弾なんざなかろうが、手前を倒す手段なんざいくらでも思いつくんだよ。塵一つ残さねぇから覚悟しろい」 「吠えたな」 「吠えたさ」 売り言葉に買い言葉。睨み合い。互いの鼻が白み。直ぐに二つの哄笑が廃墟に木霊し始める。カラッとした笑い声が大地を包む。 「面白い! ならばきっちり殺してみせろよ!!」 「上等だ! そろそろ行くぜ!!」 時間は十分とは言えないが稼いだ。もう巻き込む心配も多分ない。あとは俺が上手くやれば万事オッケー、全ては上手く収まる。 シザースナイフを抜き放ち、握り締める。接近戦の不利は百も承知。だがそれでもラーズアングリフに残された武器はそれしかない。 「来いっ!!!」 腰を低く落とし、ギンガナムの声を合図に猛然と突進を開始する。敢行したのは命がけの接近戦。 だが、それは余りにも馬鹿げた行為だった。ただでさえ鈍重なラーズアングリフだ。脚部を損傷した現在、ギンガナムと比べるまでもなく動きは鈍重を極めている。 動きは鈍く、勢いも無ければ、切れも伸びも無い。ギンガナムから見れば凡庸も凡庸。ただ愚鈍なだけの特攻としか映らなかった。 ゆえにギンガナムは激昂した。軽んじられた。甘く見られた。そういう思いが有り、自尊心についた傷が感情を刺激したのだ。 「どんな隠し玉があるのかと思えば、ただの特攻とは……実に下らん!!」 ギンガナムが動く。ラーズアングリフの鈍重さに比べ、その動きはまさに疾風。 「小生を愚弄した罰だ!! DNAの一片までも破壊しつくしいいぃぃぃいいいい、鉄屑にしてやるっ!!!」 間合いが瞬時に潰れる。ギンガナムが放った手刀は、頑強な装甲の継ぎ目を狙う一突き。 右胸を貫かれるその寸前、クルツはシザースナイフを投げ捨てた。右腕で逃さぬようシャイニングガンダムを抱きしめる。 「野郎に抱きつくなんざ趣味じゃねぇが……この時を待っていたんだよ!」 「何だこれは! この馬鹿げた熱量は!! 貴様ぁ、一体何をした!!!」 キーボードに指を滑らせ、一つの文字列を叩き込んだ。それは祈祷書の『埋葬の儀式』の一節を捩ったシャドウミラーの自爆コード。 その真髄は機密保持の為、後には何も残さない絶対の破壊。文字通り全てを無に帰す力。 即ちコード名―― ――Ash To Ash―― 「別に大したことなんざしてねぇよ。ただ土に還るだけさ。俺もお前もなっ!!」 勝利を確信し、誇らしげに笑ったクルツを光の海が包み込んだ。 →Shape of my heart ―人が命懸けるモノ―(ver.IF)(4)
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相羽 シンヤ 氏名 相羽 シンヤ 性別 男 出展 宇宙の騎士テッカマンブレード 人称 一人称:僕、俺(感情が昂ぶったとき) 二人称:おまえ、人間 三人称:あいつ 特殊技能 テックシステムによるテッカマン化。来た時間軸がブラスター化前なのでブラスター化は不可と思われる。テッカマンのため生身でもかなりの身体能力、生命力がある。また武術の腕前もかなりのもの。 性格 残忍で攻撃的。またテッカマンであるせいか人=虫けらと同じ感覚でいるため人を殺すことに躊躇が無い。極度の負けず嫌いで自分を負かせた兄のタカヤを必要以上に追い続けた。おそらくこのロワにおいても自分に深手を負わせた人間を執着し続けるだろう。ロワイアルにおいてこれ以上に危険かつ厄介な性格は無いだろう。 備考 宇宙物理学者の相羽孝三の息子にして相羽タカヤの双子の弟。親や調査団の仲間と共に土星へ向かう途中ラダムに襲われ、寄生、テッカマンとなる。昔は兄のタカヤの事を純粋に尊敬し、またその尊敬故に超えたいという気持ちだったと同時に優秀な兄に対するコンプレックスも持っていた。そのコンプレックスがテッカマンになってから増大し、執着にブレードを追い続けた。